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02 PROJECT

秩父発、
世界的ウイスキーメーカーの
資金調達をサポート

株式会社ベンチャーウイスキーさま
ウイスキー生産増強のための設備投資支援プロジェクト

PROJECT OVERVIEW

「イチローズモルト」で名高いベンチャーウイスキーは、秩父の気候と豊かな水、五感をフルに活かしたこだわりの製法でウイスキーを製造し、世界的な評価を得ている企業。しかし、ウイスキー造りには巨額の設備投資が必要であり、製品が世に出るまでに長い時間がかかる。このため、資金調達の課題が常にあるなかで、必要な融資を可能にするために、営業店法人担当の米沢はどう動いたのか。また、競合銀行を抑えて第七貯蔵庫の単独融資に成功した陰には、社内の部署との間に、どのような連携があったのだろうか。

Person Concerned

主なプロジェクト関係者

酒造メーカー
(株式会社ベンチャーウイスキー)

増産体制構築のための、
第七貯蔵庫の建設資金の調達
地元産大麦の生産者、
廃棄物処理業者を紹介

Issue
課 題

設備投資が不可欠な
ウイスキー造り。
事業の特殊性から、
目利き力が重要に

ミズナラで作られた8基の発酵槽と、美しいフォルムのポットスチル(蒸留器)が、ウイスキーの香りの中に並んでいる。ここは「イチローズモルト」で有名な、ベンチャーウイスキーの第一蒸留所。「肥土社長のご実家は、江戸時代から続く羽生市の造り酒屋。他社へ営業譲渡する際に、破棄される運命だった400樽のウイスキーの原酒を買い受けて、会社を立ち上げられたのです」と話すのは、法人営業として同社を担当する米沢である。「同社のウイスキーは、2017年から4年連続でワールドウイスキーアワードの世界最高賞を受賞しています。世界中の人々が商品を買いに訪れる、秩父を代表する企業の一つです」。

米沢が同社を担当したのは、2018年。ベンチャーウイスキーが「第一蒸留所より格段に規模の大きい、第二蒸留所を建設する」という局面であった。「一日あたりの生産量を5倍にし、売上高を5年以内に倍にする事業計画をお持ちでした」。しかし、ウイスキー造りには莫大な設備投資と運転資金が必要だ。原酒を造った後も、3年以上、長いものでは何十年も熟成させるからである。このウイスキーという製品の特性は、融資審査を難しくする。「ウイスキー原酒の熟成期間は商品を売れないので、返済はできません。在庫は増え、原料を仕入れる資金も発生し続けます」。通常の物差しで測ると、融資は簡単ではなく、企業を見る目利き力が必要となる。

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Solution
Cooperate

連携と解決

メガバンクも参加した入札に、
地方銀行ならではの秘策で挑む

第二蒸留所が稼働すると生産量が増え、新たな貯蔵庫の建設が急務になった。「第五・第六貯蔵庫と比較して3倍の広さの第七貯蔵庫を作りたい」と資金調達を打診されたのは、2020年。「投資額は、これまでにない規模でした」。ただし、世界的企業となった同社には、メガバンクを含む他行からも融資の誘いがあった。「金利や返済期間など、融資条件だけで考えれば、規模で勝るメガバンクに勝てない可能性がありました。それどころか、入札に参加することさえ難しいと思いました。お客さまに、『入札に参加できなくても、これまでの関係は変わらないから』と、なぐさめられるほどでした」。

営業店に戻って上司に相談すると、こんな言葉が返ってきた。「このまま負けていいのか?秩父の企業なのだから、地元の金融機関である我々が融資するべきではないのか」。

その言葉に、米沢は奮起した。「『これだけ地元に愛されて、世界的評価も高い企業を地元の銀行が応援しなくてどうする。メガバンクに対抗できるような良い条件をご提示できるような稟議書をまとめてみせるぞ』と思いました」。前述したように、ウイスキー造りの事業性評価は難しい。「今後のウイスキー市場の動向と、イチローズモルトの商品優位性について説明してほしい」という審査担当の依頼に応えるために、米沢は、バーや居酒屋を回り、自分の舌で“イチローズモルト”を味わった。飲食店オーナーや愛飲者にも話を聞いた。「事業性評価に具体性を持たせようと考えたからです。結果は、どこへ行っても、みんながイチローズモルトを飲んでいたし、海外や県外から買いに来ている人もいた。自信を持って、稟議書をまとめることができました」。

同時に米沢は、融資条件以外の付加価値をベンチャーウイスキーにご提供すべく、ある秘策を思い立ち、地域サポート部に連絡を取った。

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Achievement
成 果

「地元企業は地元機関の
我々が支援を」。
銀行一丸となって
勝ち取った単独融資

「肥土社長は以前より、『地元産の大麦で作った麦芽を発酵させて蒸留した原酒を、秩父産のミズナラで作った貯蔵樽で熟成させたウイスキーを造りたい』と仰っていました。地域サポート部は、農業事業者の支援も行っています。大麦を栽培してくれる農家を探してご紹介することで、付加価値を提供できると考えたのです」。連絡を受けた地域サポート部は、県内ではすでに生産されていない大麦の栽培に取り組んでくれる農家を募った。「農家さんにとっても、世界的企業のウイスキー造りに参加するのは、メリットがあると思いました」。現在までに、3軒の農業事業者をベンチャーウイスキーに紹介し、地元産の大麦を使ったウイスキー造りが始まっている。

また、ウイスキーの製造工程で発生する産業廃棄物を、二次利用する企業も紹介した。「同社のSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みに、ご協力することができました」。融資条件も、思い切った数字を提示できた。日ごろから、何度もお客さまのところへ足を運んでいたからである。「私たちの仕事で大切なのは、数字からは判断できないところを、どう感じ取って言語化するか。例えば、施設内の清潔さや整理整頓の具合、働いている人の表情も、事業性評価につながるのです」。

「武蔵野銀行さんにお願いしたい」。ベンチャーウイスキーから結果が知らされたのは、入札締め切りから数日後だった。「資金調達と農家さん紹介の両面から、ウイスキー造りの夢を支援したことが評価されたようです。お客さまからは、『地元密着の武蔵野銀行さんならではの提案だったね。これからもよろしく』という言葉をいただきました」と米沢は当時について語る。武蔵野銀行全体が一丸となって力を合わせた結果、勝利したのだ。

第七貯蔵庫建設の地鎮祭には、米沢も現地に駆け付けた。「いつか、第七貯蔵庫で熟成させたウイスキーを、社長と一緒に飲めたらいいですね」。そう話す米沢の表情は、秩父の空のように晴れやかだった。

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VOICE

お客さまの声

  • 魅力的なウイスキーを造るための
    事業特性や想いを受け止めてくれた。

    ウイスキーはストックが多く、しっかりと熟成させるには、運転資金や設備投資に多額の資金が必要です。今回の第七貯蔵庫も非常に大きな投資でしたが、ウイスキー造りに対するこちらの想いを受け止めたうえで、ご協力いただけました。また、一般的には、ウイスキーは輸入した大麦麦芽で造られていますが、以前より、「国産、しかも地元の大麦を使ったウイスキーができれば、非常に付加価値の高い商品ができる」と考えていました。その夢をお話したところ、武蔵野銀行さんは農家さんとも密接に連携を取られているので、大麦生産者とのご縁をつないでいただいた。そういうこともやってくれるのは、やはり地元の銀行さんならではだと思います。

  • 写真右:株式会社ベンチャーウイスキー 代表取締役社長 肥土 伊知郎さま

VOICE

当行関係者の声

  • 坂上 浩介地域サポート部
    成長分野推進グループ(2012年入行)

    地域サポート部は、目先の収益を追う部署ではありません。特に私が担当する農業は、1年に1回しか作物を作れません。3年後、5年後という長期スパンで物事を見ないと、お客さまの課題は解決できないのです。本案件では、「秩父産の麦芽・大麦を使いたい」というお話をうかがって、当行と親交のある生産者の方と、大麦の委託生産の仲介をさせていただきました。簡単なことではありませんでしたが、ベンチャーウイスキーさまのウイスキー造りへの想いをお伝えしたところ、秩父の地域経済に大変貢献されている企業でもあり、「協力したい」という生産者の方々が現れました。異業種間のビジネスマッチングは、“つなぐ”だけではうまくいかず、間に立って、お互いの希望や想いを“通訳”することが重要です。大麦づくりは、ウイスキーの生産計画に合わせて委託生産者を増やすなど、両者との調整、話し合いを毎年継続して行っています。

行員インタビュー

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